KOGEIマガジンVol.8 小津誠一さん

KOGEIマガジン第8回目の今回は、「工芸建築」展に参加される、建築家の小津誠一さん。「工芸建築」とはどのような考え方なのか?そして、金沢の建築物にはどのような特徴があるのか?小津さんに尋ねました。
文章:大和絵里加(AMD)

小津誠一(こづ・せいいち)
1966年金沢市生まれ。武蔵野美術大学建築学科卒業後、建築設計事務所、等を経て独立。2003年E.N.N.を設立後、金沢R不動産、飲食店などを立ち上げ、2012年より金沢を拠点に建築、不動産、飲食などのチームを率いて活動。

—工芸建築は「動産」と「不動産」が交わるところ

「工芸建築」というコンセプトが生まれたのは約5年前、さまざまな分野の専門家が集う「金沢まち・ひと会議」の場で、金沢のまちづくりについて議論をしているときであったといいます。工芸とまちづくりを繋げたらどうなるか、という発想から誕生した「工芸建築」とは、一体何なのでしょうか。

「ぼくの解釈では、工芸は動く財産。九谷の土でも輪島の漆でも、一度人の手に渡ると動いてどこかへ行ってしまう。反対に、建築というのは『不動産』と呼ばれるように、動かないものなのです」と小津さん。「茶室や寺社仏閣など、もともと建築と工芸は隣り合わせでした。しかしある時期から別々の道を歩むことになった。今は異なる2つのジャンルがもう一度合わさったときに『動かない工芸』が生まれ、何か面白いことが起こるのでは」と期待を膨らませます。

 

「工芸建築」展では、建築家や工芸作家など11名の参加作家が単独またはコラボレーションで作品を展示します。小津さんは、金沢市出身の陶芸家・中村卓夫氏とのコラボレーションで、現在は廃墟となっている町家を題材とし、「工芸建築」をテーマにリノベーションを行う予定なのだそう。今回は「工芸建築」第0(ゼロ)回として、リノベーションの模型を展示します。「普段の設計とは違い、建築と工芸が並行して存在する空間になります。例えばドアノブやランプシェードといったパーツを工芸作家さんにお願いするということはよくありますが、それでは『工芸建築』ではなくて『建築工芸』になってしまう。建築が先に来ると、お互いに面白くない。工芸のスケール感も変わらないですし、建築の飾り物として工芸があるというのは既視感がありますよね。今回はそれを逆転してみよう、という発想で、卓夫さんと制作します」と小津さんは語ります。人が住まう「家」でも鑑賞するための「アート作品」でもない。その間のどこかに位置し、「工芸建築」というコンセプトを体験するための全く新しい空間に、私たちは出会うのかもしれません。

 

—町家には歴史と技術が詰まっている

普段からリノベーション案件を数多く手がける小津さん。「金沢で建築の仕事をしていると古い町家を見る機会が多いのですが、使われている技術の高さと材料のクオリティに驚くことばかり。リスペクトしながら残すものは残しつつ、新しいことを取り入れる作業を行っている」といいます。そして、金沢で建築物を建てるということは、東京とは大きな違いがあるのだと教えてくださいました。「東京では、大きな建物でさえも消費の対象。竣工からたった数年で取り壊され、忘れられてしまうこともある。しかし金沢ではそんなことは滅多に起きません。このまちにずっと残り、皆さんに見続けてもらえるものを作るからこそ、やりがいと同時に責任感があります」と小津さん。金沢に暮らす人々の生活に心地よくなじみ、永く愛され続ける建築物は、伝統工芸への真摯なまなざしで作られているのだと感じました。

 

 

11月7日から始まった「工芸建築」展。「工芸建築」という誰も聞いたことのないテーマを提示されたとき、建築家と工芸作家は、どのように反応するのか?私たちにとって身近な「家」や「暮らし」、そして「工芸」とは何かを考え直すきっかけにもなりそうです。

 

11名の参加作家が「工芸建築」の魅力と可能性について意見を交わすスペシャルトークイベントを11月17日(金)に開催します。ぜひ奮ってご参加ください。

 

イベント詳細はこちらから

http://21c-kogei.jp/contents/kogei-architecture-exhibition/