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金沢みらい茶会|大樋 陶冶斎さん|EXHIBITION2〜茶の湯という営み〜

 

陶芸家

大樋 陶冶斎さん(おおひ とうやさい)

 

楽友会、竹渓会などは主に金沢市や石川県内に住む数寄者の集まりで、経済人、芸術家、茶道教授者、そして何よりも目利きである美術商を営む方々など、実に様々な方々によって構成されています。公での茶事・茶会もわたしは数多く手がけてきてはいますが、これらは鑑賞的側面も重視されていますので、いわば非日常的な茶会と言えるかもしれません。

しかし、楽友会、竹渓会、あるいは近隣の方々に招かれる茶会は、ある意味において日常的な雰囲気の中で行われている気がします。身近な方々が仲間を集めて、さりげなくスペシャルゲストを招き入れるような粋な茶会こそが、我々における「地域の茶会」なのかもしれません。そして、茶会の道具合わせ、あるいは都度の会話によって自らを高めることができました。

 

金沢という地には、江戸期から、そして今も、ありとあらゆる角度から茶の湯に関わる事柄を生業としてきた人々が多く存在します。茶会とは、道具を制作する職人だけではなく、料理や菓子などすべてを網羅する総合的な演出でもあります。金沢は、そういったキャストが全て揃っているという全国でも稀な地域です。また、それぞれが数寄者として茶会を催すことも繰り返されてきました。

それぞれの領域の人達が、家宝として名品も所有されています。金沢なら、四百年近くの時空を超えた金沢づくしの演出も可能ですし、また、名物と言われるようなものを用いた茶会で全国から愛好家を招き入れることも可能なのです。

 

わたしの茶の湯の楽しみは、自らが数寄者として収集したもの、あるいは再現させたもの、また、大樋家に伝わってきた歴代の長左衛門の作品などを組み合わせながら、どのような室礼ができるのかを考え抜くことだと思っております。

そして、何より大切にしていることは、招いたお客様に本当に楽しく、有意義な時を過ごしていただくこと、これに尽きるのではないでしょうか。

 

近年では二〇一二年に北陸放送の開局六十周年を記念して「本多の杜茶会」を催し、席主として、会館内の松風閣において、裏千家・千玄室大宗匠、加賀前田家十八代当主・前田利祐氏、加賀八家の現当主、石川県知事、金沢市長をはじめ、金沢ゆかりの多くの方をお迎えしました。またその際には、裏千家・千玄室大宗匠、前田利祐氏、加賀八家の現当主などが我家でお手造りされた茶盌も披露させていただきました。

 その模様は、加賀藩前田家に仕えた茶道裏千家の祖、仙叟宗室と初代・大樋長左衛門を源流とする茶の湯と大樋焼の歩みをたどりながら、金沢の地に脈々と受け継がれている伝統文化と街の魅力を探るというテーマで、MRO開局六十周年記念番組として放送されました。

二〇一四年には光悦会で席主を務めました。この茶会は本阿弥光悦を偲び、大正期から催されているもので、古今東西の茶の湯の名品を持ち寄る大茶会です。わたしは光悦茶盌や大樋焼に最も縁がある裏千家四代・仙叟宗室の軸をはじめとするありとあらゆる道具を、学び得てきた知識によって選んだことを今も鮮明に覚えております。わたしにとりましては、今までで最もハードルが高く、そして自らが問われる茶会でもありました。

 

ご存じのとおり、二〇一六年、長男に長左衛門の名跡を譲りました。そして、わたしは今もって隠居しながらも、ありがたいことに作陶を続けております。九十四歳という与えられた人生において、できうる限りの茶の湯を続けていきたいと思っております。

また、十一代長左衛門となった長男には、「金沢の茶の湯の流儀」をわきまえ、当家が所蔵してきた茶の湯の「家宝」を大事に引き継ぎながら展開していってほしいと願っています。おそらく、わたしのこの気持ちは金沢に生きてきた先人も同様だったのではないでしょうか。

それぞれの家の「家宝」が分散することなく継承されていくためには、継承者が茶の湯を続けながらそれらを時に使っていくことが大切であり、それは未来に残すべき金沢の茶の湯の原点であるかもしれません。

常に自らを高めるには、学ぶことしかありません。金沢での茶の湯というものは、美術館での展観を含めれば、日常的に、常にどこかに存在しています。一盌の茶を喫することだけではありますが、実は様々に深い意味が宿っています。陶芸家として、あるいは茶人や数寄者、自らがそれぞれの立場で茶の湯を考えることができるのは、与えられた命と共に金沢にいることができるからかもしれません。

     

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