米発酵の可能性を見つめる 純米蔵のイノベーション Focusing on the possibilities of rice fermentation:The innovation of brewing with pure rice
金沢21世紀工芸祭 kanazawa 21st CENTURY kogei festival
ふわりと広がる味わいと、すっきりとした後口。うまくて軽い純米酒で、日本酒業界にイノベーションを起こした蔵がある。創業1625年。金沢で最も長い歴史を持つ福光屋だ。
福光屋は2001年に日本で初めて純米蔵宣言をし、米と水のみでの酒造りに切り替えた。コストは上がり、
酒造りも難しくなる。業界的には非常識だったが、安心・安全でおいしいものが求められる時代がくると信じ、
真の純米酒を追求してきた。50年以上も付き合いのある顔のわかる生産者が作る米、寛永の時代から渾々と湧き出る百年水、
安定した品質を叶える社員蔵人。この3つが福光屋の酒造りを支える大きな柱だ。
福光屋には、研究開発型企業というもう一つの顔がある。米由来のアミノ酸化粧品、米と米麹を原材料にした乳酸菌ドリンク「ANP71」など、
酒以外の分野も広く開拓している。「米から酒を造るだけではなく、米を発酵させることを通じて、お客様の生活を豊かにするという志のもと、
いまだ謎の多い米発酵に秘められたパワーを探りながら、福光屋は米発酵会社としての可能性を見つめている。
ライバルは酒蔵ではない
日本酒の新たな在り方を求めて
ここ50年で酒を取り巻く環境は大きく変わった。ワインやビール、チューハイなどが台頭。消費者の選択肢は広がり、
ライフスタイルの変化に伴って酒を飲まない人口も増加している。もう、ライバルは酒蔵ではない。
日本酒業界全体を盛り上げるため、福光屋は県内の酒蔵と一丸となって様々なチャレンジに取り組んでいる。
石川の地酒と美食を集めた「サケマルシェ」、ワイン好きに日本酒の魅力をアプローチするフレンチやイタリアンとのコラボレーション。
入口を広げ、そこから日本酒を深く知ってもらうのが狙いだ。その仕掛けをどう作っていくか模索はするものの、日本酒としてのアイデンティティはぶれない。
それは、福光屋に「風土」という考え方があるからだ。土は変わらぬもの、風は変わるもの。両方を取り入れて、
しなやかに時代を生き抜いていくこと。その繰り返しが歴史になり、伝統になっていく。日本酒にはじまり化粧品、
食品と、福光屋自体も大きく変わろうとしている。次はどうなるのか、これから先も目が離せない。
株式会社 福光屋
石川県金沢市石引2丁目8番3号 TEL:076-223-1161
http://www.fukumitsuya.co.jp/
こちらのコラムは、街なかで配布している『趣膳食彩』のリーフレットでもご覧いただけます