金沢みらい茶会|石黒 太朗さん|EXHIBITION2〜茶の湯という営み〜
株式会社石黒商店 代表取締役
石黒 太朗さん(いしぐろ たろう)
二〇一八年に金沢美術倶楽部の百周年記念事業として約三ヶ月にわたって開催した「金沢 大茶の湯」に企画から携わらせていただきました。金沢は戦災に遭わず、市内には多くの由緒ある茶室が残っていますし、このときは金沢のお茶人の茶室も会場としてご協力をいただいて実現できました。ほかの街ではなかなかできないことだと思います。
また、金沢美術青年会の理事長として、五十周年記念誌「石川・富山の近代茶道―入札者と数寄者」を青年会のメンバーで三年もの歳月をかけて作りました。同テーマで開催された特別展覧会の図録に加え、加賀の近代茶道や石川・富山の近代茶人についてまとめることで、あらためて当地における茶の湯の豊かさに触れた思いです。
祖父は大正年間に、吉倉虚白宗匠に入門しました。父も若い頃に同宗匠に入門し、東京の大師会や茶道隆茗会、宗達会でも世話人をしていました。わたし個人としては、東京で建築設計の仕事をしていたときに、和室の設計などで勉強になるのではと思い、すこしお茶を習っていましたが、家業を継ぐことになり、金沢に戻って来てからは表千家の出村宗貞先生に学びました。お茶会のお手伝いや、表千家石川県青年部の初代部長も務めさせていただき、いろいろと勉強をさせていただきました。
将来的には当家にも小間を作りたいと思っています。小間での茶の湯を体験するといいものだなということがわかりますし、そこからつながっていくこともあるように思っています。
茶の湯には、亭主として主催する、もしくは客として参加する、あるいはお手伝いをさせていただく、この三つの関わり方がありますが、やはり席主がいちばん楽しいものだと思います。招く人のことを思いながらしつらえを考えることや、当日のみなさんの反応もうれしいものです。客としては普段なかなか見ることのできないお道具を目にしたり、亭主との語らいや食事も楽しみなものです。この忙しない現代に、ゆっくり半日をかけてそうした時間を味わうということは、本当に贅沢なことだと思います。忙しいときこそ大切なこと。伝統文化は時間も手間もかかりますから、お手伝いも大変ではありますが、それはそれでやりがいのあることだとも思っています。