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趣膳食彩 vol.2 大友佐俊(大友楼)・鍔正美(つば甚)

金沢の大事な工芸の支え手の1つに、料理屋があります。 彼らは代々道具・古美術を所有し、 食事の器や空間の中で使い続けてきました。 それを支えたのは道具のコーディネートや維持管理を行う道具屋や それぞれの素材毎の職人、修復士等です。 浅田屋さんと石黒商店という料理屋と道具屋の関係以外の、 金沢の老舗料理屋における工芸の歴史や流れを紹介致します 。

大友佐俊(おおとも・さとし)
金沢市生まれ。京都「菊水」や岡山「三好野弁当店」を経て1974年大友楼入社。1982年代表取締役就任、大友楼7代目。(一社)県食品協会副会長、金沢老舗百年会副会長なども務める。
http://www.ootomorou.co.jp/


鍔正美(つば・まさみ)
金沢市生まれ。株式会社つば甚代表取締役就任、16代目女将。
https://tsubajin.co.jp/

–料理屋の変遷について教えてください。

大友:

時代の変遷による起伏に則って、我々料理屋は商売を色々と変えてきました。昭和30年くらいまでは料理屋はすごく儲かって、私の祖父が一番良い時。陸軍第9師団が金沢に設置され、軍隊の色々な宴席がもたらされました。

昭和40年くらい、川魚を専門にした影船やゴリなどの専門店が閉じる中で、台頭してきたのが割烹系。カウンターから始まり料理屋形式に少しずつしていったところが新しく芽生えた代わりに、古くからの宴会や会合に焦点を置いたところがみんな沈んでいった。料理屋で生き残ったのは結婚式場なり新しい方に目がいったところと、館をきちっと整備したところです。店には保もつ理由がある。私のところは、料理屋と駅弁の二つの車輪を抱えとるから、料理屋が廃っても、その分駅弁で。観光客や旅客が増えて、車内販売もやって稼ぐことができました。

鍔:
つば甚は創業約270年。藩内の重臣や戦後GHQ、文人墨客など県内外から多くのお客さまがいらっしゃる中で、建築や空間の使われ方は時代に合わせて変化していったと聞いてい ます。 現在金沢で大きな結婚式や法事など、百名を超える宴会ができる料理屋は金城楼さんと私どもの店だと思いま す。200 畳ひとつづきの大広間もあり、大勢のお客様をお迎えさせていただいています。

100 でもそれぞれ10品お出しすると、それぞれにお膳、箸置き、椀、 机椅子含めて必要ですので道具の準備 や管理は本当に大変です。 

 

–工芸や道具屋とのお付き合いを教えてください。

大友:
昭和60ぐらいまでは道具屋が、料理屋など資力のあるところに、 「掛物がありますよ 」「 琳派がありますよ」と出入りしてたんです。でも景気や法整備など時代が変わって新しく工芸品を買い替えるよりは、祖父の時代からの持ち物を自分たちで管理して、 大事に使うようになっているというのが現状でしょうね。

道具屋や料理屋は目が効かないと商売ができない。なぜかというと掛物一つでもお客さんに聞かれるし、季節によっても全然違う。僕は祖父から教わって、お手入れの仕方から 蔵の中にどういうものがあるかまで全 部わかる。そういうものを自分で確かめて、美術館で確かめて、うちにあるもんは偽物、本物、とか大体見えるようになった。例えば磁器がどう採られて加工されてーそこから勉強して、いろんなものが相対的にそんな狂うことなく判断できるまで30年かかる。

 

鍔:
元々はお道具屋さんが入って工芸品の管理頂いていましたが、戦後宴会のスタイルが変わっていく中で自分た でやるようになったと聞いています。 私も日々忙しいなか、店にある掛け軸について調べたものをノートにまとめて整理していきました。読めなかった字も読めるようになってきますし、 作家さんや時代背景も覚えてくる。結婚して40年経った今は一覧になっていて、季節に合わせて何をしつらおうかというのはそれを参照しつつ、自分達 で行っています。この季節にこれはおかしい、という道具や工芸の取り合わせは気付く人は必ずいらっしゃいますし、お茶を学ぶ中でその点は勉強していっていますね。モノのよしあしは勿論目を効かせないといけないです。

でもとくに今は 辞典やネットで調べれば工芸の情報が 色々出てきます。お道具屋さんに毎回あれこれお尋ねしなくてもある程度の分かるようになっていると思います。だなかなか探しているけど見当たらない道具や工芸品の手配だったり、今ある工芸品の修繕だったり、道具屋さんにご相談してうまくいくことも多いです。探していた籠花入も1年かけて見つけて頂いて手に入れることができました。道具屋さんは単純にモノだけではなく、時代背景そのものを管理していただけます。

–お店にあるお気に入りの工芸は?

大友:
保管しているものの中でお気に 入りなのは、レシピやね。うちには、 料理屋を始めた幕末の頃の、加賀藩の料理の手書きのレシピ、献立集がたくさんあります。歴代の料理頭が書いたもので、「この味噌はこれとこれを合わせる 」とか「この食べ合わせはダメ とか書き留めてある。それから道具とは違うかも知らんけど、40年ほど前の食と緑の博覧会の時に、加賀藩の儀式料理を展示するとい うことで、県に言われて作った加賀の 儀式料理を全部蝋細工で仕立てて展示したことがある。お礼はいらんから、 代わりに蝋細工を頂戴と言ってもらっ たのがこれ。デパートの物産展とかに 加賀藩の食を発信するには、しばらくこの蝋細工が役に立った。自分のうちだけのことではない、それぐらいの気持ちで物事をやってるつもりなんだけれども、これだけグローバルすると金沢の食から逸脱してる料理屋がたくさんあると感じる。 

 

鍔:
が気に入っているのは古い九谷焼ですね。前田藩の来店時に使っていた美しい菊の模様の入った九谷焼があって、調べたら明治時期の再興九谷のものでした。そういう情報を知ると 愛着が湧いてきますし、工芸がお好きなお客様にお出ししてお話しすると喜ばれます。
老舗料理屋の提供する工芸は、実際に使ってきたものが残っています。古物は移動して色々な持ち主の手に渡りますし、新しい割烹さんは古いうつわを求めて使っているところがあり素敵ですね。それはそれでいいですが、料 亭にあるものはその店の中で育まれてきたもの。私達は店の中でうつわの物語を紡ぎ出してきたとも言えるかもし れません。工芸って面白いものです。

     

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