金沢みらい茶会|十四代・宮﨑 寒雉さん|EXHIBITION2〜茶の湯という営み〜
釜師
十四代・宮﨑 寒雉さん(みやざき かんち)
茶道隆茗会や宗達会といった名だたる茶会にも参加させていただいておりますが、父親の代からある楽友会も楽しみの一つです。道具屋さんに作家さん、数寄者の方、教授者の方もいらして、いろんなものを道具に見立てて楽しんでいます。お流儀も、裏千家、表千家、武者小路千家、宗徧流、遠州流、宗和流と多彩です。大きな茶会では気を張って、納得していただける道具組みを心がけますが、楽友会では遊びの気分で集めた道具も、気軽に取り入れています。
昔はいろんなところで月釜があって、祖父もよく招かれていました。その頃は、一の付く日はどこそこで、十のつく日はどこそこで、というふうに市内の至るところで月釜をしていたようです。今は茶事まではなかなかすることはありませんが、昔は各所でよく行われていたように思います。
恩師である清水宗悠先生の月釜が印象に残っています。清水先生はとても規矩作法に厳しい方で、釜をかける方が道具組みの相談のため、よく先生を訪ねていらっしゃいました。月釜では時々「今日は数寄者の釜です」と、裏千家では使わないような雅趣に富んだお道具を使われることもありました。
清水先生の月釜を思い出して、十二年前から自分でも始めました。軒先に「在釜」と看板をかけて、それを見た人がふらりと入ってきたら、お茶を差し上げます。お茶が好きな方ならどなたでもお越しいただけます。祖父や父の縁で道具や書簡などもありましたので、今、こうして自分も釜をかけることができていると思います。
月釜では思いがけないものを、ひょいと使ってみるのが楽しいですね。沖縄に行った時に買ったシーサーの置物を蓋置きにしてみたり、旅のおみやげでいただいた椰子の実の器を建水にしたりね。道具は古いからいいわけではないと思っています。使われた歴史がおもしろい。新しい、古いではなく、そのものがおもしろいかどうかを判断しながら楽しみたいですね。
今はもうありませんが、銭屋五兵衛ゆかりの茶室があった、金石の専長寺でも釜をかけました。穴水町の宮﨑家の祖先を思い創作した、一人の塩焚きの物語になぞらえた道具組みもおもしろかったですね。