KOGEIマガジンVol.9 南淳史さん

「KOGEIマガジン」第9回目の今回は、「金沢アートスペースリンク」に参加の現代美術作家・南淳史さん。1978年に金沢美術大学を修了したのち、これまで約30年にわたり作品制作を続けてきたという南さんのインスピレーションの源泉を探りました。
文章:大和絵里加(AMD)

南淳史(みなみ・あつし)
1955年 石川県小松市生まれ
1977年 金沢美術工芸大学美術科(油絵専攻)卒業
1978年 金沢美術工芸大学研究科修了
1980年より、石川県内を中心に数多くのギャラリーやアートスペースで個展・グループ展を発表している。

—つくることは生きること

30年以上にわたり、作家活動を行ってきた南さん。これまでに手がけてきた作品は、制作方法も展示場所もさまざま。もともとの専門であるドローイングから、石や竹など自然素材を使った造形、舞台演出など幅広く手がけられてきました。「人間はお金を稼いでご飯を食べるだけでは生きていけない。自分の生きがいとなる面白いことを常に探している」と南さん。作家活動のなかで参加している「内川鎮守の森ギャラリー」では、内川の竹林を展示会場にし、「仏の庭」と「ガブリエルの椅子」など12の作品を生み出されました。「仏の庭」では、約100人の参加者がそれぞれ1体の仏像を紙粘土で制作し、それらを細い糸でつなげ、南さんが制作された大日如来へと集めました。「その当時、私の親友が亡くなり、自分を支えていた太くて強い糸が切れて、今まで保っていたバランスが崩れていくのを感じました。人間は周りの人やものとの関係性でこの世に存在しているということを表現したかった」のだといいます。「ガブリエルの椅子」は、竹でできた羽を接着した椅子に参加者を座らせ、ピンホールカメラで撮影すると、人間ともわからない羽の生えた物体がぼんやりと写し出されるというもの。そして、このときの制作体験が現在の作品づくりにもつながっていると南さんは語ります。

 

発光する天使たち

今回「金沢アートスペースリンク」に展示されるのは、内川の竹を結束バンドで留めながら整形した立体物の中にLEDが光る作品とドローイング。「たまたま人間の形をしているように見えるけれど、私としては、籠を作っているという意識なのです。抽象的であろうと具象的であろうと、何かを内包する籠状の形をしたものであればいい」と南さん。LEDライトを仕込んだ理由は、竹林に差し込む光の美しさに魅了されたからなのだそう。「竹や笹が生え、そこに自然光が入り込んできて、キラキラ輝くような景色になる。そして夕方になると自然光が弱くなり、人工的な光と同じ光度になると作品がぼやっと霞んで見えて、ただ作品がそこに存在しているように見えるのです」と南さんは語ります。

 

今回は蔵のような空間を備えた、金沢市博労町のギャラリー As baku Bにて11月16日(木)より展示される「天使の標本」。竹林とは異なる、屋内における光の演出にも注目です。さらに、11月18日(土)には「第2回As baku 論壇会〜模型飛行機と現代美術〜」も予定しています。南さんが在廊され、作品の解説や、現代美術に入るきっかけとなった模型飛行機についてお話しされるそうです。芸術の秋、土曜の夜にゆったりとアートに浸ってみてはいかがでしょうか?

 

イベント詳細はこちらから

http://21c-kogei.jp/contents/kanazawa-art-space-link/id/2033