KOGEIマガジンVol.15「大人の工芸部/ミニゆびぬき作り体験」ワークショップ
「KOGEIマガジン」第15回目の今回は、「金沢みらい工芸部」より11月25日(土)に行われた「大人の工芸部/ミニゆびぬき作り体験」の当日レポートをお届けします。
文章:宮本夏帆(金沢21世紀工芸祭ボランティアライター)
大西由紀子(おおにし・ゆきこ)
加賀ゆびぬき作家。加賀てまりと加賀ゆびぬきの専門店「加賀てまり毬屋」店長。ゆびぬき教室や展示会も開催。
−色と模様で姿を変える伝統工芸
はじめに、加賀ゆびぬきとは古くから金沢に伝わる手作りの裁縫道具で、江戸時代の終わりにはすでに作られていたといわれています。自分で作り、布を縫うときに中指にはめて針を刺すための道具として使う実用品でしたが、市販品の登場や生活スタイルの変化により、作る人が減り、その伝統は途絶えかけていました。しかし、表面を覆う絹糸の緻密な模様の美しさや作る楽しさから、近年は工芸品やハンドメイドの趣味として注目されています。
加賀ゆびぬきは、絹糸・真綿・厚紙などを重ねて作ります。今回は用意された土台に、3色の絹糸で模様をかがるワークショップでした。とんぼ玉ほどの小さな土台には和紙が巻かれ、その表面に模様にあわせたしるしが書き込まれており、そのしるしに合わせて糸をかがっていきます。進行方向に合わせてかがり進めていき、2 周目からは、1 周目の糸の真横に隙間無くかがっていきます。3 周したら糸の色を変えて同じように進め、これを繰り返し、土台の縁が見えなくなったら完成です。とても細かく、根気と集中力が要る作業です。初めは気を張っていたように見えた参加者たちも、少しするとコツを掴み、各々のペースで楽しみながら作業に取り組んでいました。
今回の参加者はお母さんと娘さんお二人のご家族3人で、娘さんの学校から「金沢21世紀工芸祭」のことや「ミニゆびぬき作り体験」のことを知り、参加したそうです。ワークショップの感想を聞くと「自分でも驚くほど集中してでき、初めの糸選びや作っていく過程が楽しかった」と話してくださいました。
大西さんの丁寧な説明に耳を傾ける参加者
一本一本、糸をかがらせることで緻密な模様を作る
講師の大西さんにお話を聞くと、加賀ゆびぬきは50〜60代の方がよく作られているそうで、最近では若い方で始められる方も多いとか。なかには、自分で製図を書く方もおられるそうです。基本的な糸のかがり方は変わらないけれど、色や糸の本数で模様を変えられるところがパズルのようで楽しく、土台の大きさによって、今回のようなミニゆびぬきやブレスレットなどのアクセサリーにできる点が魅力だと教えてくださいました。
加賀ゆびぬきは色の使い方も自由で、同じ模様で作っても、できあがりの印象が全く異なり、複雑に見える模様でも見た目より簡単に作ることができるのだそうです。
どんな年代の方でもチャレンジしやすく、精緻な模様と絹糸独特の光沢が美しい加賀ゆびぬき。ぜひ一度作ってみてはいかがでしょうか。