KOGEIマガジンVol.4 石黒太朗さん

KOGEIマガジン4回目の今回は、「十間町五三茶会」で亭主を務める、「石黒商店」代表・石黒太朗さん。同じ十間町に店を構え、祖父の代からの長いお付き合いだという茶道古美術商「谷庄」で行われた、「十間町四四茶会」から続く五三茶会はどのような茶会になるのでしょうか。金沢市十間町53番地、石黒商店を訪ねました。
文章:大和絵里加(AMD)

石黒 太朗(いしぐろ・たろう)
1967年金沢生まれ。大学卒業後、5年間の会社勤務を経て、帰沢、現在石黒商店四代目。主に古美術や茶道具(さび系・表千家流)、近代工芸や地元と縁のある作家作品などを取り扱う。金沢美術商協同組合理事ほかに従事。

—四四から五三へ 移ろいゆく季節としつらえ

爽やかな秋風は木枯らしに姿を変え、道行く人の装いにも冬の到来を感じる頃。茶道の世界でも、10月から11月にかけては季節の大きな変わり目であるといいます。釜の湯を沸かすために使用する茶道具が「風炉」から「炉」へと変わる時期であり、10月14日に行われた四四茶会は、最後の風炉が渋み溢れる空気感を醸し出していたのに対し、11月12日に行われる五三茶会は、炉が始まる「炉開き」として新しい季節を迎えるための明るい雰囲気になるのだそう。「季節が変わると、しつらえ、道具組、茶の味も茶菓子もすべてが変わる。そうすれば空間そのものがガラリと変わります」と石黒さんは語ります。10月から11月、四四から五三へ。移ろう季節が異なる趣向の茶会を生み出していくのです。

 

四四茶会の様子。奥には「風炉」が鎮座しています。

 

—「和漢のさかいをまぎらかす」 ジャンルレスでオープンな茶会を

さらに今回の茶会は、東アジア文化都市2018金沢開催に向け、日中韓のつながりを再認識することもテーマの一つ。侘び茶の祖と呼ばれる村田珠光がかつて「和漢のさかいをまぎらかす」という言葉を残したように、古くから侘び道具を使うときは、唐物と呼ばれる、中国や韓国の茶道具と和物(国産品)を混ぜることはごく当たり前の風習だといいます。四四茶会に続く五三茶会でも、唐物に和物、さらに地元工芸作家の器を織り交ぜた道具組を使用。それぞれは異なる要素でありながら、同じ空間に配されれば心地よく調和する。そんな道具組をじっくりと鑑賞するのも、五三茶会の楽しみです。「作法についてはあまり気にせず、まずはお茶を美味しくいただいてもらえれば」と優しく微笑む石黒さん。長い年月をかけて集められた貴重な古美術の数々を眺めながら、季節を感じ、茶を味わう。そこにはきっと、静かで幸福な時間が流れていることでしょう。

 

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http://21c-kogei.jp/contents/kanazawa-mirai-chakai/id/459