KOGEIマガジンVol.6 岸田志穂さん
市民がボランティアライターとなり作家やアーティストに取材を行う「KOGEIマガジン」第6回の今回は、明るい染色と繊細な刺繍で、見る人の気持ちを温かくする、素敵な染色と刺繍を営む岸田志穂さん。工芸回廊では蜜菓子店「菜菓匠 奈加川」にて展示しました。
作品づくりにかける、岸田さんの熱い想いに迫ります。
文章:大平一貴(金沢21世紀工芸祭ボランティアライター)
岸田志穂(きしだ・しほ)
1989年 埼玉県生まれ
2012年 女子美術大学芸術学部工芸科染専攻 卒業
2014年 金沢卯辰山工芸工房 入所
2017年 金沢卯辰山工芸工房 修了
—楽しい時間を縫い留める
大学で型染(かたぞめ)を学んでいた岸田さん。刺繍に進んだきっかけは、型染に趣味の手縫いを組み合わせたことだといいます。染めた布に刺繍の線を入れることで、フラットな布に表情が入るのが醍醐味。色を扱うのが好きで、制作中は色遊びをするかのように色彩豊かなアクセサリーを作っているそうです。使っている人の「楽しい日々を縫い留めたい」という想いを織り交ぜていきます。
ー未来を想って紡ぐ糸
そんな岸田さんの作品の中でもひときわ目立つのがファースト・シューズ。時間をかけて刺繍を行う意味を考えていた時、たまたま美術館で見たこぎん刺しの足袋に着想を得たのだとか。「『刺繍をする』という行為とその時間は、誰かを想い・願い・祈る時間に適していると考え、ファースト・シューズを制作しています」と語る岸田さん。赤ちゃんが人生で最初に履く靴だから、その子が元気に育つよう、明るい未来を願って作りたい。温かい印象を受けるこの作品は、岸田さんの熱い想いによって作られています。
ちなみにこのファースト・シューズは、お米や銀杏など、食べられるものがモチーフになっています。それは「元気に育ってほしい」「実りある人生になってほしい」という赤ちゃんへの思いを想像して仕立てているからだそうです。
—新しい表現に挑戦
この夏、金沢市の芸術支援活動の一環でフィンランドへ行った岸田さん。今回の展示では、そこで学んだボビンレースという伝統技法を使った作品を発表しています。組紐のように糸を組み合わせて作られた窓飾りが、優しい木漏れ日を店内に届けていました。
金沢21世紀工芸祭では「工芸回廊」のほか、「金沢アートスペースリンク」にも出展されます。「冬じたく」をテーマに、東山の「ギャラリー椋」にて10月27日から11月8日まで、グループ展を開催しているそうです。
寒い金沢の冬に備えて、楽しく、明るい日々を縫い留めた岸田さんの作品を眺めに来ませんか?
イベント詳細はこちらから
http://21c-kogei.jp/contents/kanazawa-art-space-link/id/2027